こんな疑問を解決!

  • リスクオフでなぜ円高になるのか?
  • 日本円は安全資産なのか?
  • リスクオフの円買いのメカニズムは?

今回の記事はこんな疑問を解決していきます。

よく新聞やニュースで「リスクオフの円高」「リスク回避の動きから円が買われた」と言われていますが、「本当に日本は安全なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

円は安全資産といわれても、いまいち理由が分からないですよね?

結論から申し上げますと、実は、リスクオフの時に円を『安全資産』と思って買っている投資家なんて一人もいないのです。

リスクオフ時に円高(円買い)になるメカニズムは大きく2つしかありません。

今回は、メガバンクで為替ディーラーを経験し、今は現役投資家でもあるプロの目線から、どうしてリスクオフで円高になるのかについて徹底解説します。

この記事を読めば、リスクオフで円高になる理由が理解でき、人に説明することも出来るようになりますよ!

この記事の執筆者
suzuki_gazou

鈴木 拓也
株式会社フィンテラス代表取締役

  • 三井住友銀行で為替ディーラー業務を経験して独立
  • 純資産4億円をFXや株で運用中|2023年利益+5,000万円超
  • 著書「7日でマスター FXがおもしろいくらいわかる本」「世界一やさしい FXチャートの教科書 1年生」など
  • 公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定アナリスト

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日本の円は本当に安全資産なのか?

リスクオフで円高(円買い)になる理由について説明する前に、日本の円が本当に安全通貨なのかについて考えてみたいと思います。

ちなみに、リスクオフとは以下の意味の言葉です。

投資家がリスクを回避するようになり、より安全な資産に資金が向かいやすい相場状況を表した金融用語です。ここ最近では、中国の景気減速や米中貿易摩擦の懸念が再燃するとリスクオフ(リスク回避)となり、株式から比較的安全とされる米ドル(米国債)や日本円(日本国債)などに投資家の資金が向かいます。つまり、万が一に備えて、リターンは低くても安全な金融商品が選ばれる状況がリスクオフです。対義語はリスクオンです。

引用:SMBC日興証券

 

日本の経済状態ですが、財務省が発表した経済データ(2018年)によりますと、貿易やサービスなどの海外との取引で生じた国全体の収支を表す経常収支は約19兆4144億円の黒字となっており、世界には経常赤字国の国もあることを考えると、健全な状態であることが分かります。

一方、債務残高を見ると、これはメディア等でも頻繁に取り上げられている問題ですが、日本は大幅な債務超過の国です。

債務残高(対GDP)を他国と比べると日本が236%と、米国や英国などといった先進国と比べてかなり高い水準であることが分かります。

引用:財務省

 

このことからも、日本がデフォルトするかどうかの問題はさておき、少子高齢化で日本の経済成長率がたいして高くない状況の中、世界中の投資家が日本を安全で魅力的な投資先だと考え投資しているかと言われれば、明らかに疑問であると言えます。

「いや、借金の国債は日本で消化出来ているから問題ない!」と考える人もいるかもしれません。

仮に安全資産として円が買われている可能性があるとしても、何かリスクオフのニュースが出る度に、待ち構えていたように瞬間的に急激な円高になるのは明らかに不自然です。

昔から円を安全資産と考えている人なら、すでに円を買っていると思いますし、その買い取引のタイミングが一度に集中するとは考えにくいです。

これは、為替や株をリアルタイムで見ているトレーダーなら、「その通りだ!」と感じるでしょう。

つまり、リスクオフで円高になる理由は別にあると言えます。

リスクオフで円高(円買い)になる2つの理由

それでは、なぜリスクオフで円高になるのかについて解説をしていきます。

メガバンクで為替ディーラーを経験し、現役投資家の私が考えるリスクオフで円高になる理由は以下の二つです。

リスクオフで円高になる理由2つ

  • リスクオフでの円買いが投資家の間で共通認識になっているため
  • キャリートレードの巻き戻しが起こるため

リスクオフの円高が投資家の共通認識であるため

一つ目の理由は「リスクオフの円買いのパターンが投資家の間で共通認識になっているため」です。

これが、リスクオフで瞬間的に急激な円高になる理由の大半を占めていると言えます。

昔は「有事のドル買い」などといった時期もありましたが、近年はリスクオフ時にドルよりも円の方が買われます。

そしてその共通認識から、最近主流となっているヘッジファンド等によるアルゴリズムを用いた自動売買にて、「米国が中国に対して追加関税発表」「北朝鮮のミサイル発射」などのリスクオフを連想させるキーワードに即座に反応して「円買い」をする命令が組まれているのです。

加えて、それを知っている人間の投資家やトレーダーも、リスクオフの状況となれば、追随して円買いに走ります。

利益を上げているプロのトレーダーほど、この事実をしっかりと意識していますので、流れに逆らうなんてことはしないでしょう。

つまり、リスクオフになれば円高という共通認識のもと、利益を狙う投資家の多くが円買いを行うのです。

 

では、リスクオフで円買いとなった、具体的な事例を見てみましょう。

以下は、2017年8月29日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した時のドル円の5分足チャートですが、「北朝鮮ミサイル発射」のニュースを受けて、ドル円が一瞬にして30銭ほど円高になっています。

これはFXトレーダーや為替マーケットを見ている市場関係者なら分かりますが、ニュースが流れたと同時に瞬時に為替が動くので、人間のスピードではとても追いつくことが出来ず、アルゴリズムの自動売買による仕業なのです。

そして、状況を把握した人間の為替ディーラーや個人FXトレーダーも、利益を得るためにその流れに乗って円を買ったり、もともと円を売っていた人はそのポジションを閉じる円買いを行うのです。

 

このように、「リスクオフ→円高」の共通認識がある今、何か悪いことが起きたら円を買おうという一つの行動パターンが出来上がっているのです。

リスクオフで円買い(円高)が起こる流れ

  • ニュースのリスクオフのワードに反応して、プログラムが瞬時に円買いを実施
  • それに追随して人間トレーダーも円買いを行う
  • 円が買われて円高になる

キャリートレードの巻き戻しが発生するため

二つ目の理由は、「ャリートレードの巻き戻しが起こるため」です。

キャリートレードとは、円などの金利の低い通貨で資金調達をして、それを外貨に換えて(円→外貨のFXが発生)、利回りの高い債券や株式で運用することです。

例えば、景気が良い時には、下図のように投資家が金利が低い円で資金を調達し、それを米ドルなどの外貨にFX(両替)をして、高利回りの外国債券や株式へ投資をします。

この流れが強ければ、円からドルへのFXが頻繁に起きるので、円売り圧力が高まり、為替は円安にいきます。

 

今度は、逆に景気が悪くなった場合にはどうでしょうか?

この場合には、先ほどの流れとは逆に、今まで積極的に高利回りの債券などに投資をしていた投資家が、一旦リスクを抑えるためにそれらの資産を売却して、お金を返済しますので、ドルから円へのFX(両替)が頻繁に発生します。

そうなると、外貨売り円買いのFXにより、為替は円高のほうに動くというわけです。

つまり、このリスクオフでキャリートレードの巻き戻しが起こると、株売り・円買いの流れが発生しやすいと言えます。

 

金融や投資の知識を持った賢い人たちは、株安円高の中でも資産を増やし続けています。

資産を増やす投資方法について学びたい方は、以下の記事もご覧ください。

記事:FXの2000万円運用実績!不労所得を得る方法

コロナショック時のリスクオン・オフ

以下は、2021年9月8日時点の追記です。

従来はリスクオンで「ドル高・円安」、リスクオフで「ドル安・円高」が一般的なパターンでしたが、コロナショックでは一時的にこの関係が崩れるケースが起きました。

2020年3月のコロナショック以降のドル円と日経平均株価のチャートを見ると、日経平均株価は上昇している一方で、ドル円はドル安・円高が進んでいます。

つまり、リスクオンにも係わらず、ドル円は円高が進行したのです。

この背景としては、米国の大規模な金融緩和でマネーが市場に溢れたことで株高を誘発し、日経平均株価は上昇。

その一方で、緩和状態によるドル安からドル円は下落したと考えられます。

なので、例外的なケースと言え、コロナ相場が落ち着けば、従来通りのリスクオンで「ドル高・円安」、リスクオフで「ドル安・円高」のパターンに戻ると考えられます。

リスクオフで円高になる理由のまとめ

リスクオフ時に円を安全資産だと考えて買っている投資家はほとんどいません。少なくとも、相場を動かすほどの大口投資家がそのような考えで円を買うことはないでしょう。

リスクオフ時に円高になる理由は大きく以下の2つです。

リスクオフで円高になる理由2つ

  • リスクオフでの円買いが投資家の間で共通認識になっているため
  • キャリートレードの巻き戻しが起こるため

リスクオフで円高になる理由をしっかりと把握できれば、ファンダメンタルズ分析から相場の流れを読み、FXで利益を上げることが出来ますね。

FXのファンダメンタルズ分析について学習したい人は、次に以下の記事を読みましょう。

記事:FXファンダメンタルズ分析の基本と情報源【証券アナリストが解説】



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