「クロス円とは何だろう?」

「ドルストレートとの違いは?」

「各通貨の相関関係はどうなっているんだろう?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

私はメガバンクで為替ディーラー業務を経験していますが、多くの個人FXトレーダーの方とお話していく中で感じたのは、『外国為替市場では常識』のことでも、個人投資家はほとんど知らないということ。

そして、このクロス円はその一つです。

クロス円とは、ドル円以外の対円通貨ペアのことで、例えば、ユーロ円やポンド円のことですね。

そして、クロス円は『合成通貨』であり、クロス円自体が独立して価格が動いている訳ではありません。

この事実を知らずにユーロ円やポンド円の取引をすると、思いがけない突発的な値動きで負けるリスクが上がりますので、今回の記事を最後まで読み進めて頂けますと幸いです。

<今回の記事で分かること>
・クロス円の仕組みとは?合成通貨とはどんな意味?
・ドルストレートとの違いとは?
・各通貨間でどんな関係があるのか?

 

動画でクロス円の仕組みについて解説

動画でクロス円の仕組みについて解説をしていますので、視聴できる方はご覧ください。

クロス円とはどんな通貨ペア?

クロス円』とは、ドル円(USD/JPY)を除く円を含んだ通貨ペアのことを指します。

例えば、円を含むドル円以外の通貨ペアとしては、ユーロ円(EUR/JPY)、ポンド円(GBP/JPY)、豪ドル円(AUD/JPY)、NZドル円(NZD/JPY)、カナダドル円(CAD/JPY)、スイスフラン円(CHF/JPY)、トルコリラ円(TRY/JPY)、南アランド円(ZAR/JPY)、などがあります。

一方、円を含まない通貨ペアを『ドルストレート』と呼び、ユーロドル(EUR/USD)やポンドドル(GBP/USD)などが挙げられます。

それでは、クロス円にはどんな特徴があるのか?説明していきます。

クロス円は合成通貨ペアである

よく値動きが激しいことからFXトレーダーの多くは、ユーロ円やポンド円などの取引をしますが、そもそも、金融市場では、ユーロ円やポンド円などのクロス円は、直接取引はほとんどされていません。

ではその、FX業者を通じて個人FXトレーダーが取引しているユーロ円などのレートは何か?

結論から申し上げると、クロス円のレートは、ただのドル円とドルストレートの掛け算(もしくは割り算)のレートに過ぎないのです。 まさに、仮想のレートのようなものです。

決して、ユーロ円やポンド円が独立して存在して、売買によってレートが動いている訳ではありません。(※クロス円主導で、ドル円やドルストレートが動く時はあります。)

 

以下は、ユーロ円(EUR/JPY)がどのような計算式で作られているかを示したものです。

ユーロ円のレートは、ユーロドル(EUR/USD)とドル円(USD/JPY)の掛け算のレートで算出されています。例えば、ユーロドルが1.1200、ドル円が100円の時、ユーロ円は、112円(1.1200×100)となります。

クロス円の計算方法

インターバンク市場でのクロス円の流動性はわずか

ちなみに、マーケットのことを少し説明すると、例えば、個人投資家がユーロ円(EUR/JPY)をFX会社と取引した後、インターバンク市場(銀行などの金融機関同士の市場)では何が起きるかと言うと、ユーロドル(EUR/USD)とドル円(USD/JPY)に分解されて、これらの取引が執行されます(※あくまで一例)。

つまり、ユーロ円をトレードすることは、ユーロドルとドル円のレートで計算される仮想のレートが上がるか下がるかを予想してトレードするのと同じことと言えます。

※上記は一般的な説明であり、クロス円が主導で相場が動くケースもあります。

 

クロス円の特徴
・クロス円とはドル円を除く円を含んだ通貨ペアのこと
・クロス円は、ドル円とドルストレートの掛け算(または割り算)で計算される
・クロス円の流動性(取引量)は少なく、ドル円とドルストレートでの取引がインターバンクでは主流

各通貨間の相関関係について

では、クロス円やドルストレートなど、それぞれを監視してトレードすることにどんなメリットがあるのでしょうか?

それぞれの通貨の強弱関係や相関関係を把握できるのでしょうか?

結論から言えば、クロス円を監視し、トレードするメリットがある場面はあります。

 

例えば、ユーロ買いと円売り地合いが強まった時は、ユーロ円が大きく上昇しますので、ユーロ円のロングを仕掛ける絶好のチャンスです。

ユーロ買い&円売り地合いが強まった時

 

逆に、よく分からなくなる場面は、例えば、USD買い地合いが強まった時、ユーロドルとドル円の動きが逆行しますので互いに打ち消し合い、どちらに動くか分かりづらくなります。

ユーロ円の値動きが読みづらい場面

クロス円から見た関係(例:ユーロ円)
・ドル円上昇&ユーロドル上昇の時、ユーロ円も上昇
・ドル円上昇&ユーロドル下落の時、ユーロ円はレンジまたは、値動きの大きい方につられる

頂いたご質問と回答

鈴木(T-ya)鈴木(T-ya)

頂いた読者さんからの質問と回答を参考までに掲載します!やや複雑ですが、参考程度にご覧ください。

以下、頂いた質問です。

FXを始めて1年経ち、今まで勝てなかった理由が、最近やっとわかってきました。面白くない時期もありましたが、希望も見えてきた感じがします。
私が鈴木先生に質問したいことは、「クロス通貨のチャートを見ることは、3通貨の強弱を見極める上で、意味があるのか?」ということです。

【クロス円の質問1】

ユーロ円の価格は独立しておらず、ただ、ユーロドル×ドル円で自動算出されるだけの、仮想レートであると始めて知ったのは鈴木先生のブログ記事でした。外国為替のことを全く知らなかった私には驚きでした。また、先生は別の記事で、ドル円、ユーロドル、ユーロ円のチャートを比較することで、どれが最強通貨か見えてくると述べておられます。ここで具体的に疑問が出るのですが、例えば、ユーロドル上昇でドル円上昇であれば、ユーロ円チャートを見なくても、強い順にユーロ>ドル>円という関係がわかります。では、ユーロドル上昇でドル円下落であれば、ユーロ>ドル、ドル<円まではわかりますが、ユーロと円のどちらが強いかはユーロ円チャートを見なければわからないですね?しかし、ユーロ円はユーロドルとドル円に引っ張れているだけの実際には存在しない仮想レートであるならば、ユーロと円の強弱関係を調べるのにユーロ円チャートを見ることは意味があるのかという疑問がわくのです。このような場合、ユーロ円チャートが下落していれば、強弱関係は円>ユーロ>ドルと判断できるものなのでしょうか?

【クロス円の質問2】

もうひとつ、ユーロ円レートについて疑問があります。先生は金融市場でクロス通貨の直接取引はほとんどされていないと述べておられます。ほとんどないということは言い換えれば、少しはある、つまりインターバンク市場でユーロと円のストレート取引は手続き上は可能で、規模は小さいがあるということになるのでしょうか?もしそうであれば、仮に世界のどこかで価格を影響させる程度の大口のユーロ円ストレート取引があった場合は、瞬間的にユーロ円チャートが独立して上昇する、つまりユーロドル×ドル円=ユーロ円の計算式が一瞬崩れるのか、それとも、ユーロ円価格が主導してユーロドルとドル円の価格を影響させる、つまりユーロドル×ドル円=ユーロ円の計算式は崩れないのかどちらになるのでしょうか?
クロス通貨については、以上のような疑問がずっと頭にありました。ネットを調べていても、なかなかその辺りのことまで詳しく記載された記事を見つけることができないので、思い切って鈴木先生に質問いたしました。もしご回答いただければ幸いです。

鈴木(T-ya)鈴木(T-ya)

かなり深く考察されているのが分かりますね。以下、ご質問に対する(一個人としての)回答になります。

クロス円 質問1の回答

結論から申し上げると、クロス通貨のチャートを見ることは、当該3通貨の強弱を見極める上で、意味があります。
(もちろん厳密に言うと、ご指摘の通り、クロス円の計算式から、見なくても暗算すれば判断は出来ますが、クロス円をみた方が視覚的に容易に判断できるということです)

具体的に説明すると、「ユーロドル上昇、ドル円下落」のケースにおいて、ユーロ円を見ることで、相場が『ドル安が原因で動いているか?』それとも『円高が原因で動いているか?』などを推測出来ます。またそれに応じて、取りうるトレード戦略も変化します。

パターンとしては、以下の3つです。

クロス円による通貨間の強弱
1.ユーロ円が横ばいの場合、ドル安が原因で「ユーロドル上昇でドル円下落」と判断出来ます。つまり、強弱関係は、ユーロ>=円>ドル
2.ユーロ円が下落の場合、円高が原因で「ユーロドル上昇でドル円下落」と判断出来ます。つまり、強弱関係は、円>ユーロ>ドル
3.ユーロ円が上昇の場合、上記ケースでは、ユーロ高が原因と判断できます。つまり、強弱関係は、ユーロ>円>ドル

 

ここで、それぞれにおいてトレード戦略にも影響が出ます。

例えばですが、円高が強いということはリスクオフの可能性もあり、株売りや、円ロングが有効ですからね。逆にクロス円が横ばいであれば、リスクオフではなく、他の戦略も思いつきます。

クロス円 質問2の回答

これはインターバンクを経験した人しか分からず、ネットで調べてもまず出てこない情報ですね。

結論から言うと、クロス円自体で取引することは規模は小さいが可能です。例えば、1億円程度であれば、クロス円でも流動性があるので取引が成立するでしょう。

そして、大口取引をクロス円ストレートでした場合、クロス円の流動性が無いので一気にクロス円のレートが動き、一瞬、計算式が崩れる可能性があります。ただ、その乖離を狙ってヘッジファンドなどが裁定取引を行い、乖離はすぐに消えると思われます。

ただ、為替のプロが流動性のないクロス円でわざわざ大口取引することは考えにくいのでレアケースと言えるでしょう。

クロス円のまとめ

以上、合成通貨ペアの説明になります。

もちろん、クロス円のチャートだけ見ても勝てますが、これらの事実を知っておけば、更にトレードの精度が上がることは間違いないでしょう。

クロス円がどんな背景からレートが決まっているかを理解することで、クロス円の値動きも予想しやすくなります。


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鈴木 拓也

東京工業大学大学院卒。メガバンクの国内・海外支店にて為替ディーラー業務を経験後、独立。現在は、自己資金で投資を行う傍ら、FXを中心とした投資スクールを運営。日本証券アナリスト検定協会会員(CMA)。